エンジニアでロボットなTVアニメ動画ランキング 2

あにこれの全ユーザーがTVアニメ動画のエンジニアでロボットな成分を投票してランキングにしました!
ランキングはあにこれのすごいAIが自動で毎日更新!はたして2024年12月25日の時点で一番のエンジニアでロボットなTVアニメ動画は何なのでしょうか?
早速見ていきましょう!

63.8 1 エンジニアでロボットなアニメランキング1位
LISTENERS リスナーズ(TVアニメ動画)

2020年春アニメ
★★★★☆ 3.2 (179)
557人が棚に入れました
人類は「ミミナシ」と呼ばれる謎の生命体により、その生活を脅かされていた。ミミナシに対抗することができるのは、戦闘メカ「イクイップメント」を操ることができる能力者「祈手(プレイヤー)」のみ。スクラップの街「リバチェスタ」で暮らす少年・エコヲは、ミミナシとの大きな戦いで伝説を残した祈手・ジミを目撃して以来、密かに祈手に対して憧れを抱いていた。ある日、ゴミ山で採掘仕事に励んでいたエコヲは、記憶喪失の少女・ミュウと出会う。彼女もまた、祈手の一人だった。やがて二人は、謎多き人物・ジミを追う旅に出る──。

声優・キャラクター
村瀬歩、高橋李依、釘宮理恵、花澤香菜、諏訪部順一、上村祐翔、八代拓、上田麗奈、銀河万丈、下野紘、田中敦子、本名陽子、ゆかな、千葉繁、大原さやか、日笠陽子、黒沢ともよ、佐藤利奈、チョー、島袋美由利、中村悠一、大塚芳忠、水樹奈々、山寺宏一、福山潤
ネタバレ

ぺー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

リスナーそっちのけ

オリジナルアニメ


始めに言っておくと“凡庸な作品”です。

選ばれた人間であろう人達の身体の一部に差し込みジャックみたいなのがあって、そことエフェクター+ギターアンプみたいなのとをコードで繋ぐとロボが現れてキンタ…いや戦闘力マシマシみたいな基本設定。彼らは“プレイヤー”と呼ばれ相応の敬意を払われるべき存在として描かれます。
相対する存在としては“ミミナシ”と呼ばれる、それこそ『千と千尋』のカオナシのような雰囲気をまとった突如として里や街に現れて人々を襲う化け物たち。


基本設定のみであらすじは省略しますが“音楽”を一つ題材にしたボーイミーツガールになるんだろうと思います。主役はジャンクの山で暮らしてる少年エコヲ・レック(CV村瀬歩)と、そのジャンクの山でエコヲに拾われる記憶喪失の少女ミュウ(CV高橋李依)。『エウレカセブン』みたいですね。と思ってたら作った人一緒みたいです。

 {netabare}1話で謎の美少女と出会うアニメ{/netabare}

『ラピュタ』以来のお作法があると思うんですけど少女が世界の趨勢を握っちゃっているパティーンですね。空から降ってくるか埋もれてるのを拾うかは些細な問題です。自分も含めてホイホイついていく方は多いでしょう。
嫌いじゃないのです。ただし現物がダメ出しすると止まらなくなりそうな品で、それが少し忍びないのでいいところ2つ挙げときます。引っかかりありそうならばぜひどうぞ!


■高橋李依さんこういうのもできるのね

従前は『からかい上手の高木さん』の高木さんと『この素晴らしい世界に祝福を』のめぐみんが真っ先に思い浮かぶ声優さんって感じでした。それとエンドロールみないと高橋さんだとわからない(^_^;)
例によって本作でもエンドロールみてびっくらこいたのですが、上の2役とも違ってちゃきちゃきの江戸っ子的おてんば娘やっててもしっくりくるのが驚きでした。少なくとも私が視聴済みの高橋さん出演作品のどれとも違う味。今期『かくしごと』でも娘さん役で主演されてました。思春期の落ち着きあるトーンの子という意味で高木さん寄りにはなりますが明確に違いが分かりました。自分にとっては、そんな彼女の演技の幅の広さを発見できてラッキー!みたいな作品でした。


■音楽大好き?

始まりの街リバチェスタ。リヴァプール+マンチェスターみたいなもんでしょうか。ビートルズがリヴァプール出身なのはもはや説明不要。
もうひとつマンチェスターと言えば…そりゃ1話のサブタイ“Live Forever”みりゃピンときますよ。エコヲ姉が経営するバーの店名が答え合わせです。

{netabare}オエイシスですね、OASIS(キリッ){/netabare}

実在ミュージシャンらをなぞったようなキャラだったり、そんなミュージシャンの有名エピソードをややオマージュした展開だったりが繰り広げられけっこう楽しめます。
殿下とかまんまあの人だったし(笑) 
例えば“Live Forever”なんて自死したNirvanaのカート・コバーンへのアンサーソング的な解釈もあって、ちゃっかり本作でもニル(CV釘宮理恵)というキャラが登場してたりするわけです。

ただしマニアック過ぎですね。wikiを参考にしましたが、○○の本名とか△△の嫁が所属してたバンド名とか私にはお手上げです。



で、結局そういうことだったのかなぁ、と。
謎の美少女との出会いというとてつもなくベタな導入やその後の展開だったりで骨子はオーソドックスなものの、ところどころマニアック過ぎてクエスチョンマークが乱舞するようなちぐはぐさ。バランスって大事ですね。なんといいますか

{netabare}クリエイターがやりたいことを詰め込んでみました{/netabare}

音楽の扱い方からそんなのが透けてみえた作品でした。

 1.高橋李依の新境地に興味
 2.洋楽けっこう好きよ

そんな方にお薦めです。それに、作り手のこだわりに呼応できれば“凡庸な作品”という私の評価とは真逆にもなり得る一品かもしれません。



※長めの余談

■エンディング

毎話新曲。そしてそれなりのクオリティ。エンディングアニメーションも毎度違うので手間かかってます。飛ばしちゃダメですよ。全曲ミュウ役高橋さんの歌唱です。
この毎回エンディング曲を変えるのは外形だけみると『高木さん』スタイルと言えます。
あちらはJ-POPのカバー。こちらは全曲オリジナル。やや妄想入りますが決定的な違いがあります。
すでに認知されてる楽曲群であれば、曲にまつわるストーリーや前提知識には事欠かず、歌い手の解釈が容易なのと受け取り手(リスナー)も態勢が整ってます。
新曲だとそうはいきません。作詞作曲クオリティの良し悪しは置いときますが、アフレコの傍ら3カ月クールに合わせて12曲を咀嚼するのって至難の業だったんじゃないかなと邪推してます。リズムと音程を合わせるテクニカルな作業で精一杯。唄に魂を込める作業までには至らないという意味です。

これ難しいところなんですよね。※以下ネタバレ

{netabare}世界の趨勢を握るキーマンだったミュウ。本作におけるロードムービー的な物語構成を考慮する。さらに都度出会ってきたプレイヤーたちから受け取ってきたモノの蓄積が最終的に闇落ちからリカバーする際の力となったことも考慮する。

{netabare}一話一話の積み重ねに重きを置いてるつもりのラストだったので、ミュウが毎回歌うのは模範解答中の模範解答なんです。{/netabare}{/netabare}

{netabare}ただしそれだとミュウ役高橋さんに無理ゲーを強いることに。となるともう一つの選択肢。メタ的な整合性を重視しないで、せっかくの週替わり的なサブキャラたちに歌わせてもよかったかな、と。

・サブタイトル
・登場キャラ(実在アーティストをオマージュ)
・オマージュアーティストのエピソードに寄せた展開
・オマージュアーティストに寄せたエンディングの曲想

これらがわりとシンクロしてたと思います。だったら諏訪部さんにプリンスを深掘りしてもらって、釘宮さんにニルヴァーナを深掘りしてもらったりして、全曲とはいかないまでもサブキャラ役のCVさんに唄ってもらう。それだけで高橋さんの負担軽減に繋がり、もっと曲自体の説得力が増したと思われます。{/netabare}




{netabare}ちなみにプレイヤーは祈手ということらしいですね。つまり“player”ではなく“prayer”。{/netabare}

深みのある設定だと思います。つくづくもったいねー。。。
LISTENERSと銘打っておきながらリスナーズ(視聴者)を置いてけぼりにするとか笑うに笑えません。



視聴時期:2020年4月~6月 

-----


2020.06.24 初稿
2021.03.05 修正

投稿 : 2024/12/21
♥ : 45
ネタバレ

shino さんの感想・評価

★★★★☆ 3.5

スーパーソニック 

MAPPA制作。

瓦礫の山、僕の居場所。
かってここは世界の中心だった。
夢の残骸に埋もれたこの国に残されたものたちは、
溢れたゴミを日銭に変えその日を生きる。
夢なんて見てはいけない。
今を見ろ、生きろと。

ジャンクパーツを集める少年エコヲは、
瓦礫の山で記憶喪失の少女ミュウと出会う。
{netabare}得体の知れないミミナシの脅威から、
イクイップメントを操るプレイヤーとなり、{/netabare}
壮大な2人の冒険が始まる。

まるでエウレカを見ているようだ。
ここでも音楽が大きな意味を持つのだろうか。
OP映像は見事で心に響いきました。

私は私でなければならない。
他の誰でもないのだから。
私らしく生きる。

OASISからタイトルを頂こう。

9話視聴追記。
ラブ&ピースの世界観なのか、
それとも演出なのか、どうにも馴染めず、
難しい設定だなとは思いますが、
入り込む前に突き返される現状ですかね。

最終話視聴追記。
{netabare}何ものでもないちっぽけな存在であれ、
他者を他者として肯定する。
これからもそうやって生きるのだろう。
付けたタイトルに間違いはなかった。
最終話は爽快でしたよ。{/netabare}

それなりにって感じでしょうか。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 42
ネタバレ

pister さんの感想・評価

★★★☆☆ 3.0

今観てる

9話までの感想{netabare}
第一印象が「エウレカセブンみたい」で、実際メインライターの片方がその人らしくてとても納得。
で、もう片方が“メカクシ”の人で…お、おう、そうなのか。
エウレカもメカクシも個人的に評価芳しくないんだけど、悪かった部分を改善してくれればそれでいいので色眼鏡はかけずに見てみることに。

で実際、3話までは悪くない。
ちょっとテンポ早いかなーと感じる部分はあるけど、10年前に何が起きたのか早めに明かし、ヘンに謎に謎を重ねて引っ張ることで「何が分からないのか分からない」というのが起きない様にした配慮は感じる。
が、4話から「あれ?この作品ってこんな世界なの?」という違和感が…。
卒業後軍隊入りを目指した孤児を集めた学校って。
その金払ってるの何処?政府?じゃあその政府はリバチェスタは統治してないの?
5話も似たようなモンで、違和感の正体は都市から都市への移動が早すぎる(近くに感じる)せいなんじゃないかな?と思ったり。
文化水準の差が極端すぎるというか。
3話終了から4話開始までにあと2・3話挟んで、移動をメインとした回があればまた印象違ってたんじゃないかな?
6話も唐突、それまで「音酔い」を予感させる描写ってあったっけ?
ビリン&ケヴィンは知らなかったのか?
なにより「あ、これは」と思ったのが、三姉妹が襲ってきた時のミューの台詞「しつこいのよあンたら」で、まるで今まで追い掛け回されて来たかのような口ぶり。
2度目のハズなんだが…そこは「まさか私達を追ってきた?」じゃないかなぁ?
7話も展開がおかしい。
これといって政府に搾取されてるシーンも無いのに、当たり前の様にライドとリッチーが政府に反発心を抱いてて「?」。
リバチェスタに比べれば全然良い生活じゃん?もし高い税金取ってたとしても、その一部は学園都市に充てられてたんじゃね?
と思ったら地区を破壊し出して、「ハイ、政府は悪者なんです」って理由を後からとって付けた感が果てしない。
極めつけは8話冒頭、いきなりお迎えが来て…いやいやいやいや、それじゃあ(7話は置いといて)2話以降手がかりを追って旅してきた意味が無いじゃん。
リバチェスタに滞在しっ放しでも勝手に向こうから迎えが来たんじゃない?
そこはあくまで自力で辿り着かないと…ってかこれ漠然とした記憶あるぞ、打ち切りのパターンだ。

ひょっとして元は2クールかそれ以上を想定して話を組んで、急遽なんかの事情で1クールに変更になって無理やり詰め込んだ?
そう思えばそれまでの展開のおかしさ・必要な描写をすっ飛ばして話が進んでた感じも納得が行く。
えー、そうなん?

でもって8話は他にも変で、エース「10年間ジミを戻す方法を探しようやくこれ(ステージセット)に辿り着いた」と言う割には10年間ミュウを探してた素振りが一切無い。
ロンディニウムに何かウラがあるにしてもミュウやエコヲが変に思わないのが何か変。
というか、手段と目的入れ替わってね?
目的は「ミュウの記憶を探す」でジミに会うのは手段に過ぎない…じゃないの?
ジミでなくてもエースやトミーが知ってそうじゃん?何故尋ねない??
それはそれでミュウに何か考えがあってなのかなー(実はリバチェスタで最近生まれたばかりでミュウも薄々気付いてたとか)と思って9話まで我慢してみたけど、そうでもないっぽい。

更に9話ではトミーが何を企んでたのか明かすのだけど、「自我の枠を超えて人々が繋がる、そして人々が一つの意識となってミミナシ亡き後の世界を導く──」。
えー、それって“マクロス⊿”…いや集合意識ネタはよくあるネタだし“ダーリンインザフランキス”の方が最近だけど、歌絡みとなると⊿かなぁ、と。
元々作風や世界観が“キャロル&チューズデイ”に似てて、だけど放送次期も近いし作ってる側も「あちゃー、被っちゃったか」と思ってるだろうと思ったけど、⊿は放送されてから十分期間開いてるじゃん?
企画の早い段階で誰か言わなかったのかなぁ?
それともまだ話数あるしもうひと捻りあるのかな?{/netabare}

11話までの感想{netabare}
主人公には最後までエンジニア?メカニック?を貫き通して欲しかったのだけど、パイロットになっちゃったかー。
そりゃ7話でそうなりうる可能性は十分示唆されてたけど、ちょっと残念。
だってさ、これじゃあ「音酔い」の設定死亡じゃん。
音酔いのリスクを抱えつつミュウの傍に居続けようとエコヲが男気を見せる作品だと思ったのでね、違ったかぁ。
といいつつ実際のとこ、音酔いの設定って必要だったのか疑問ではあったんですけどね。
もしかしたらロズが嘘吐いてたか勘違いしてたんじゃないかなー?と思ってて。
だって音酔いの話って6話のみポンと出てきた話で、それまで兆候も無ければそれ以後他の人の症例も無い。
悪い言い方しちゃえば思い付き感が凄い。
“エウレカセブン”で「抗体コーラリアンの活動時間は1246秒」と具体的過ぎる数値を明かされて「(秒一桁まで断定されてるのは)なにか意味があるのかな?」と思ったら全然無かったことを思い出したw

10年前のフェスでは「ミミナシ掃討派」が「ミミナシ共存派」を騙して、その結果計画は失敗するわロズの親父は死んだ訳だけど、プリンスとロズが顔見知りだったのは違和感。
ってかプリンスが被災者を救援して回るのを「ワールドツアー」と称したのはいい表現だと思うけど、そのために撒いたビラにミュウの写真が載ってるのはどういうことなんだろう?
「この災害の犯人はコイツです」って紹介してた?
そうでないと釘宮が怒りを燃やして奮起する動機が無かった?いや、9話でトミーに対し「お前のせいか!」って言ってなかったっけ?
と思って見返してみたら「ティーンスピリットを流した犯人」と「リッチ&ライドの仇」は別腹なのか、面倒くせぇw

やりたいことは分かるんだ、10話はカントリー曲をやりたかった、11話は荒廃した街の中ビラが振り撒かれるシーンを描きたかったんでしょう。
ただ練り込みがちょっと…前回の感想で書いたトミーの目指してた計画も結局何だったんだか有耶無耶にされそう。{/netabare}

投稿 : 2024/12/21
♥ : 10

62.0 2 エンジニアでロボットなアニメランキング2位
ユーレイデコ(TVアニメ動画)

2022年夏アニメ
★★★★☆ 3.1 (81)
203人が棚に入れました
情報都市トムソーヤ島。ここの住人たちは視覚情報デバイス「デコ(デコレーションカスタマイザー)」を使い、超再現空間と呼ばれ る仮想空間と現実をリニアに行き来する生活を営んでいた。さらに「らぶ」と呼ばれる相互評価が数値的に可視化されており、バラン スのとれた価値観を保つことで平和な社会を形成している。多くのらぶを集めることでデコが拡張されることもあり、住人は多くのらぶ を集めるために日々奔走していた。そんな島では「怪人0」が引き起こしている、「0現象」と呼ばれるらぶ消失事件の噂が広がってい た。ある日、0現象に偶然巻き込まれてしまったことから「ユーレイ」と呼ばれる住人登録の無い、見えない存在になってしまった少女 ベリィ。彼女は天才的なハッカーでありユーレイのハックと出会い、怪人0と0現象の謎を突き止めるため、ハックが率いるユーレイ探 偵団に参加する。ユーレイとして舞い込む依頼を解決していくなかで、ベリィはトムソーヤ島に隠されたある真実に近づいていくことに なる。

nyaro さんの感想・評価

★★★★★ 5.0

構造主義と情報化の中で大事なのは、仲間と体験と家族と自分を信じること。

 23年7月に再視聴3回目か4回目だと思います。23年4月までに書いたリアルタイムと追記のレビューをまとめています。ほぼ主旨は変えていません。評価は4.6を5にしました。


 テーマ性のあるアニメのいいところは、興味が尽きないという点もありますが、引用元や難解な思想をかみ砕いてエンタメの形で見せてくれることです。
 エンタメという表皮がかぶさるので、直接見えないため食べる時に中身を口の中で咀嚼し、味わないと何が入っているのかわからないという難点もありますが、本作はかなり上手く料理しているのではないでしょうか?

 本作、大きなフレームで言えば、構造主義の奴隷問題ですね。要するに自分自身というものは生物、社会、言葉、情報、その他さまざまな自分を取り巻く、事象によって外部的に規定されている。その制約からは逃れられず、自分の考えや欲望などは無いという話です。
 そこに対する答えが、ならば、大切なのは実体験と仲間であり家族の記憶である、という事なんでしょう。「DO IT YOURSELF」「スーパーカブ」がまさにこういう話だったと思います。

 初めはパノプティコンのようなフーコー的な世界観も考えたのですが、それはちょっと考えすぎなのかもしれません。が、島が円形で上から監視される形で監獄を連想させます。

 または、もう少し視座を落としても、情報ネットワークに支配された人間の生活もまた、逃れようがない未来という視点もあったと思います。むしろ、最終話まではこちらの話がメインだったと思います。

 オーウェルの「1984」のような監視社会におけるデオドランドされた社会という問題がありました。正義の定義の画一化は思想統制そのものです。社会は骨抜きにされ、表層だけは平和な社会ができる。「リコリスリコイル」「サイコパス」でも扱っていたテーマです。

 情報の真偽の問題があります。これは情報に踊らされるという面もありますが、流通される情報量によって、無いものが実在化する、という点も描いていました。ユーレイデコのユーレイの部分。つまり、情報的に認知されない存在は実在しない。ゆえに情報がないものは排除する。
 ただ、ネガティブな事だけでは無かったですね。なぜウワサを信じるのか?好奇心ですね。好奇心が行動につながりました。
 
 もちろん「攻殻機動隊」や「シリアルエクスペリメントレイン」「電脳コイル」などの後継としての役割もあるでしょうが、ゼロ現象は集合的無意識のようなものではなかったので、サイバーパンクとしての問題提起は薄かった気がします。


 デコの存在は、自分が見たいものだけみる。自分を見られたいように見せる。そして、社会が見せるべきものだけ見せる。ラブポイントは承認欲求であり、価値観の統一化です。評価=経済でした。
 これはSNSのいいねはコカインよりも人を中毒にさせる問題とも関連しそうです。ここから言えるのは、自分を信じること。自分の価値観を持つことでしょう。

 本作で気になるのは、マークトゥエインという「作者」とトムソーヤという「作品」の関係。そして「ハックルベリー=フィン」という「登場人物」の関係ですね。
 ハックルベリーは経済社会、労働社会に嫌気がさして死を偽装して逃亡します。どこまでメッセージを込めたのかは制作者に聞かないとわかりませんが、アナロジーを考えると面白いネーミングです。ただ、これはまあアナロジーというほどでもないかなあ。冒険にひっかけているだけかも。


 で、これだけ詰め込まれているのに、話は面白いんですよね。1回目はちょっとハックの独特な言葉がひっかかりましたが慣れると気になりません。これは、言語によってハックの自由さ、無垢さを象徴しており、ラストにつながってくるのでしょう。

 それとデコが壊れて=視点が自由になる。また、情報から消えることでユーレーになる。そしてどんどん広がっていくベリーの世界。この展開がストーリーの面白さにつながっていました。

 作画は良いですね。キャラは独特ですが、この話は萌えではちょっと伝えきれない気もします。その一方でもし「リコリスリコイル」のキャラデザでやってればという気もします。そこで損している感はありました。

 音楽。いいですね。OPEDとも毎回ほぼとばさなかったです。途中のBGMも楽器が少なめのピュアな音だったのが、雰囲気を盛り上げました。

 トータルでテーマとして情報化社会、ポスト構造主義の中で生きる視点を与えてくれて、非常に良い出来だったと思います。
 そして、SFとして設定も話もよくできていました。種まきも伏線回収も展開も良質だったと思います。
 キャラも必要十分な配置を無理なく使い切っており、また、キャラ造形も上手いかったと思います。

 サイエンスサル。いいですね。「平家物語」「映像研には手を出すな!」などTVは絶好調です。こういうのを作りたいという想いが感じられます。

 本作は見れば見るほど面白くなる、不思議なアニメです。最近上で上げたように同じようなテーマの話が増えている気がします。

投稿 : 2024/12/21
♥ : 14
ネタバレ

横比較無用ノ介 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.1

現代らしい童話なのかな

マーク・トウェインの作品を拝借しつつ、仮想未来都市を設定。
POPでカラフルでありながらも、奇妙な雰囲気が漂う世界が舞台になっている。
お節介で直情的なベリィと、自己中心的なハック。
子供を主人公にすることで、ストーリーは無軌道な感じになる。

だが終わって見れば、シンプルな物語だった
情報規制、情報隠蔽によって、犯罪抑止された世界が理想的なのかを問う内容。
このメインテーマを直線的に描くと、殺伐とした雰囲気になりかねない。
そこで、子供たちがメインの物語にしたのだろう。

後半は目標が明確になり、分かりやすくなった。
だが、序盤の散乱したイメージが強すぎて、高評価は付けにくい。
作品同様、感想もまとまりを欠いてしまう。

ということで、以下雑感。
{netabare}
「トムソーヤ島」
冒険少年の名を冠する島。その実態は監視社会(某大国でしょうか?)。
だが、枠にはまらない者は必ず生まれる。否定したくても、人間は元々多様です。

「オノマトペ」
ハックがやたらと使う耳障りな擬音。彼が嫌いで脱落した人も多そう。
実は、教育を受けていないため、語彙力が無いことを表現しているのかな。
海外向けには、どのように翻訳するんだろう。

「嘘から出たまこと」
トイレットペーパーが不足するというデマ情報。これをメディアが否定。
その結果、トイレットペーパーに関心が集まり、買い占めが起き、不足してしまう。
人間は万物の尺度。最近は扇動目的のデマも多い。気を付けましょう。

「主観だけで体験し判断することでは、感情と言う罠に嵌り、時に真の評価を...」
情報リテラシーにも通じそうな、フィンのセリフなんだけど、まさか、
"感情移入できないので、つまらないとか言ってると、本当の面白さは理解できないよ"
という意味じゃないよね。過剰な深読みであって欲しい。

「Complete Control」
The Clashの1977年の曲。
"Oh, complete control, even over this song"
この曲でさえ、完璧にコントロールされている。
{/netabare}

投稿 : 2024/12/21
♥ : 5
ネタバレ

レオン博士 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4

目に映る虚構と心に映る真実

【紹介】
「情報化社会の歪に疑問を投げかける」メッセージ性全振りな作品で、メッセージのいくつかには共感しました!
VTUBERにメタバース、ARにVR、そのうちこんな風に仮想空間と現実が融合した世界で生活する日が来るのかも?

【感想】
こういうものを作りたいっていう意思とオリジナリティが感じられていい作品だと思いますし、面白かったです!
面白かったけど、なんか好きになれなかった

意識高い系のデザインやキャラクターは尖っていて個性的だけど、狙いすぎかも、わたしには良さが分からなかったです
それから「ラブい」「ゲジゲジ」とかバズらせようとしてるようなオリジナルワード連呼もニガテ
流行語ってみんなが使っていればエモいけど、みんなが使わないキャッチーなワード連呼してる人を見てるといたたまれない気持ちになります
それを意識高い系な雰囲気で堂々とされると、うーん・・・?って微妙な気持ちに
そういった意識高い系な作りとなんかずれてる感じが好きになれないとこかなー?

{netabare}
作者の伝えたいメッセージ伝えることには成功してるけど、伝えることに一生懸命でシナリオが犠牲になってる気がします
ベリィやハック達の生き方を中心にした話じゃなくて、伝えたいメッセージにキャラクターを登場させているだけな感じで物語の軸がないように思います

それから世界観の設定も不思議なことが多くて、これだけ情報化社会が発達しているのにどうして人が手動で管理してるの?とか(国中??都市???に流れる情報を全部人が管理って、何人必要なの?)大事な情報を管理しているところに簡単に侵入できてしまうセキュリティとか
すごいのかすごくないのかよくわからないです
たぶん有害な情報かどうかなんて今でもAIが識別して管理できると思うの
{/netabare}
【シナリオ】{netabare}
大量の情報の中から取り入れる情報を取捨選択できる世の中ですが、情報を取捨選択している気になっているけど実は与える情報を管理されている嘘で塗り固められた世界
現実世界でもそういうところはあるけど、それが行き過ぎた世界がユーレイデコの世界観

みんな自分が知りたい情報、見たい情報、楽しみたいコンテンツを自分で選んで自分で判断している「気になっている」けど
その自分で選択して手に入れた情報はホントウに真実?
それは管理者によって都合の悪い情報は削除され、都合の良い偽情報によって塗り替えられた虚構・・・
ただの文章や映像ならいいけど、それが視覚や聴覚まで塗り替えられるようになったら、人は真実に気づけるのでしょうか?

「ラヴ」がないと楽しい生活はできない、なりたい自分になるにも、見たいものを見るにも「ラヴ」が必要
このラヴは多くのSNSにある「いいね」と同じ、あにこれにもありますよね

この「いいね」を集めないと生活できない世界の歪な姿を描くことで、いいねを集めるために何でもする世の中への疑問を投げかけているみたい
わたしも同感です、人からいいねをもらうこと、人から評価されることを最優先にしていくと、大事なことを見失う気がして
本当に魅力的なものは、他人の評価を気にせず、自分が一番いいと思ったものを見せることじゃないでしょうか?
それは多くの人には受け入れられないものかもしれないけど、誰か一人から「最高!!!」って言ってもらえるものになるかも?

こんな風に情報化社会のいろいろな「変なこと」を痛烈に風刺しながら「忘れちゃいけない大事なこと」をメッセージとして発信しているみたいで
いい作品だと思います
{/netabare}
【例えばこんなメッセージが込められていました】{netabare}
・真実でも有害になりそうな情報は検閲して削除してしまう世の中は正しいの?
・情報を削除されるとすぐに忘れてしまうくらい人間の記憶は曖昧、でも大事なことは絶対忘れない
・目の前に実物があるのに、登録されてないor身分が証明されてないと信じてもらえない、見えてるのに見えなくなることの奇妙さ
・目で見たわけじゃないのに、誰でも編集できるwikiをホントウだと信じて疑わないこと
・ネットにあふれる嘘の情報、真実がどうかよりも書いたもの、騒いだものがち、声の大きな意見が正義という歪んだ世論
・人は真実でも嘘でもないただのうわさを信じるのか?誰からなのかわからない噂を伝言ゲームみたいに人から人へ伝えていく謎のシステム
・悲しみは一人でも十分に味わうことができるけど、喜びは誰かに手伝ってもらわないといけない

シナリオ書いた人の伝えたいことはなんとなくわかって、共感ポイントが多いアニメでした

{/netabare}

投稿 : 2024/12/21
♥ : 14
ページの先頭へ